約2年ぶりでございます〜

こんばんはー!
約2年ぶりのご無沙汰でございました!←蹴
ちょっと書いてみた刀剣乱舞SS。
みつくり、くりみつ前提の女性キャラ登場という少し変わった設定です。
刀剣乱舞キャラが女性と絡むのは好きでない方は回れ右です。
ここに以前載せた鬼畜眼鏡SSを刀剣乱舞キャラに置き換えて書いたものです。





私は今相当に酔ってる。

自覚はあるけど、グラスを持つ手は止まらない。くいっと一気に中身を空ける。

酔った時独特の浮遊感というか、こういう感じ好きなんだよね。

色々なことがどうでも良くなって、あるがままに身を任せてみたくなる。

理性って何だっけ、状態だ。

「そのへんで止めておけ」

聞き慣れた声が隣の席から聞こえて来る。私の大好きな声だ。凄くいい声なんだよね。私この人の声に惚れたのかも。

彼は私の会社の先輩。声に負けないくらい顔も好みで、決して器用ではないけれど黙々と仕事をこなしていく姿に惚れ込んで。知り合ってから好きになるのにそう時間は掛からなかった。

こんな素敵な人に恋人がいないわけがない。告白したところで玉砕するのは目に見えてる。相手は大人の男だもん、私みたいなついこの間会社に入ったばかりの新人なんか相手にしてくれるわけないって、分かってるんだ。…でもね。

今しかないなって、思ったの。

洗練された雰囲気のバーの店内は少し照明が薄暗い。

そんな中、社員はそれぞれに会話を楽しんでる。部署内の懇親を深めるための飲み会なんだけど、20人以上の社員が集まってるからそれなりに賑やかだ。

仕事の都合で店に遅れて来た彼が、たまたま空いていた私の隣の席に案内されて来た時にはどんなに嬉しかったか。

神様がくれたこのチャンスを無駄に出来る筈がない。座った場所がカウンターで、周囲に座っていた社員がテーブル席が空いたからとそちらへ移動して私と彼のふたりきりになったことも、私を後押しした。

「あのですね。大俱利伽羅さん」

ちょっと口が回っていない感じもするけど。彼がこっちを見てくれてるのは分かったから、私は構わず続けたの。

「私、大俱利伽羅さんのこと、好きだな〜」

もう酔ってるから何でもあり。単刀直入。

なんて返事が返って来るかな、と待っていたら、しばらく間があった後で、

「そうか」

って、いかにも面倒臭そうに一言だけ返ってきた。

如何にも彼らしい。

酔っ払いだと思って軽くあしらっとけって感じ?

負けないぞ!こっちだって酔ってりゃ怖いモノなしなんだから。

「私がこんなこと言ったって本気にしてもらえないのは分かってますけど。いるんですよね?彼女」

「…いや」

「うっそだぁ。いないわけないじゃないですか、そんなに素敵なのに。女が放っておくわけがないですよ。すみません、ビールジョッキでお願いしまぁす!」

「もうよせと言っているだろう。明日の業務に差し支える」

「そっちの心配ですか。私の身体の方も心配して欲しいなぁ」

「君の身体が心配だ。もうやめろ…これでいいのか」

「なんですか。その棒読み。でもいいなぁ。その声でそんなふうに言われるの。いい声だって言われません?腰に来るんですよね」

「おまえぐらいだ、そんなこと言うのは」

「うっわ!今のいいです、凄くいい!」

「…あ?」

「おまえって。もう一回言ってください!」

「付き合ってられん」

言いながら立ち上がり掛けた大俱利伽羅さんの袖を瞬時に掴んだ。

だって私、彼と話せてすごく嬉しかったし、もっと話したかったんだ。

「…仕事絡みでは時々話しますけど、こんなふうに話すことって、あまりないですよね。平気な顔してるように見えるかも知れませんけど、実はいっぱいいっぱいだったりするんです。お酒が入ってないとこんなふうに話せません。だから、」

もう少しだけ、付き合ってください。

酒の力を借りて訴えたその声は、震えていたかも知れない。

そこで振り切って行ってしまうような人ではなかった。彼は浮き掛けた腰を元に戻してくれた。

「…優しいんですね」

「そんなこと言うのもおまえくらいだな」

「あー、もう、ほんとにいいです!何度でもおまえと呼ばれたい」

「三度目はない」

「もうおしまいですか!スマホで録音するんでもう一回」

「いい加減にしろ」

怒られてもいい声。こんなに好みの声ってなかなか聞けないんだよね。

「おい。何時まで持ってるつもりだ」

「へ?」

…持ってる?何を?

何のことだか瞬時に理解が出来ず、間抜けな顔をしていたら、

「引っ張られて迷惑なんだが」

と言いつつ彼が袖のあたりを指さして来た。

あっ、いけない。さっきから掴んだままだった。でも、こんなこともう二度と出来ないだろうし。

「もう少し持ってていいですか」

と聞いてみたら、

「だめだ」

容赦なく返された。

ですよね〜。

可愛い恋人に掴まれるならいいけど、何とも思ってない女に袖持たれても不快に思うだけだよね。

名残惜しむようにゆっくりと彼のスーツの袖から手を離した。

私は一度息を吐き出して、意を決して聞いてみたの。

今夜の彼はお酒が入っている所為か普段よりも良く喋る。

いつもならスルーされてしまう質問にも、今なら答えてくれるかも知れない。

「酔った勢いで聞いちゃいます。…付き合ってる人、いますか?」

「…ああ」

お酒の力を借りているとは言っても、実は相当な覚悟でもって告げられた質問に、彼は真摯な姿勢で答えてくれた。

分かっていたけど実際言われるとへこむなぁ。切ないわ。

「どんな人ですか」

そんなこと聞いたって、おまえに話す必要はないと思うが、とか何とか言われて終わりだろうと思ったのに。

言葉を選ぶかのような沈黙の後で、彼は言ったの。

「世話好きでお節介。何か付けて格好付けたがるのには辟易としてる」

…女性なのに格好付けたがるの?

大俱利伽羅さんが辟易とするくらいに?

「…ちょっと面倒臭い人ですか?」

どんな人なんだろうな、と想像を巡らしつつつぶやいたそれに、彼は小さく苦笑してみせる。

うわ、初めてみたな、彼のこんな表情。貴重だぞこれは。

「面倒臭いかそうじゃないかと言われれば面倒な方かも知れんが…」

そして私は更に貴重なものを見たり聞いたりすることになる。

「でも、悪い奴じゃない」

そう言った時の、彼の瞳。そして声。

初めて見せられた穏やかな瞳と、今まで聞いたことのないような優しい声音。

たまらなかったです、はい。

大俱利伽羅さんが悪い奴じゃないって言うんだよ?

良い人に違いない。

彼なりの最大の賛辞だ。

どんなに恋人を大切に思っているか。ちゃんと伝わって来ましたよ。

これは諦めるしかなさそうです。

「彼女さんとお幸せにぃ…」

「…寝るなよ?」

「もうだめです…。おやすみなさい」

「おまえみたいに重い奴運ばせるな、迷惑だ…って、おい、寝るなと言っている!」

今、三度目言いましたね?

ないって言った癖に。

それに私背は高いかも知れないけど太ってないですから。重いなんて失礼ですよ?

失恋したというのに、想像していたほどには落ち込んだりしなかったのが意外だった。

大俱利伽羅さんの滅多に拝めない優しい瞳が見られた所為かな。

あの大俱利伽羅さんにあんな表情させてしまう彼女に一度会ってみたいな、と思いつつ、慣れない仕事の疲れも手伝ってか、私は深い眠りに落ちたの。

その後どうやって家に帰ったのか全く覚えていないんけど、目が覚めたらちゃんと家のベッドで寝てたのよね。

で、出社してみたら、大俱利伽羅さんと男性社員のふたりで私を家まで送ってくれたという事実を知り、速攻で大俱利伽羅さんのデスクへ向かいお詫びを入れた私でした。

迷惑だなんて言いながらちゃんと家まで送ってくれる大俱利伽羅さん、やっぱり優しい人です。

酒は呑んでも呑まれるなってね。実感した次第でございます。







いやだってさ。「彼女」じゃないからね。だから最初の質問は否定してるわけですよ。

二度目の質問では「付き合ってる人」って、聞いてますからね。そりゃ、いるっていうわな。

「え?僕って面倒臭い人だったの?」by光忠w

お粗末様でした。