刀剣乱舞 続き

はい、続きです。
前回のSSを読んでからこちらを読んでくださいね。







「うーん、これは…」

「ちょっとないよねぇ」

もうすぐ終わりを告げる昼休み。

オフィスの片隅に腰かけている私達ふたりの手元にある、それはゆずのくずきり。

私の友人が大手コンビニの商品開発室に勤務していて、

『これ今度新発売予定の商品なの。食べてみて。感想聞かせてね!』

数日前に、余程自信があるのか満面の笑みで渡されたモノ。

付属のプラスチックのスプーンでそれをすくって一口食べた後の感想がこれだ。

友人には悪いけど、なぜ普通にゼリーにしなかったのかと疑問を抱くことしかできない。

くずきりとゆず。ミスマッチ過ぎやしないか。

蓋を開けてしまったのだから最後まで食べないと失礼だ。

とりあえず容器の中のくずきりはすべてお腹の中に収めたけれど。他の社員の人達にも配ってね、と渡された残りのくずきりをどうしたものか。

私が残された容器を手に取ってため息を付いたその時だった。

少し離れた席に座っていた大俱利伽羅さんと目が合った。

私の勘違いかと思ってみたりもしたけれど、このオフィスの片隅にあるテーブルに陣取っているのは私達ふたりだけ。

彼の視線は間違いなくこちらに注がれていた。

私が大俱利伽羅さんの席に視線を送っていたら、隣の席に座っていた同僚がすくっと席を立った。だからそこで私の視線は彼から同僚へと自然に移動した。

「ごめん、これから打ち合わせなんだ。もう行くね。友達には普通にゼリーにした方が売れると思うよって伝えておいて?」

私と同意見をくれた彼女に「貴重なご意見ありがとう」とだけ伝えてひらひらと手を振った。

もう一度、大俱利伽羅さんに視線を戻す。

あっ、違った。

彼は私を見てるんじゃない、彼が見つめていたそれは私の手元のゆずのくずきりだ。

そりゃそうだよな、私が彼を穴が開くほど見つめることはあっても彼が私を見つめてくることなんてあるわけがないし。

まさか、と思いつつも、若干離れた場所にいる彼に聞こえるように少し大きな声で、

「これ、食べますか?」

と聞いてみたら。

小さく頷いてみせた。

何これ反則、かわいい。

頷くんだよ、あの大俱利伽羅さんが。

もうそりゃあ速攻で立ち上がって彼の席まで届けに行くでしょうよ。

普段は彼の方が背が高いから私が見上げる形になるわけだけど、今は彼が座っているから見上げられる感じになる。

見下げてもいい男なのには変わりがない。

…なんか照れるな。

「あの…、言っておきますけど、あまり美味しくないですよ」

「別に構わない。腹が満たされればなんでもいい」

言われて気が付いた。

そういえばついさっきまで大俱利伽羅さん会議だったんだ。

長引いてお昼食べ損ねたのかも。

どうぞ、と言ってスプーンとともに渡したら、早速蓋を開けてぺろりと平らげる。

余程お腹が空いてたらしい。

「もうひとつ、いっちゃいます?」

と尋ねたら、軽く頷く。

いやだもうなんだこのかわいい生き物。

私が酔った勢いで告白してからも、変に意識することなく普通にこんな感じで接してくれるので実にありがたい。

いや、欲を言えば少しでも女性として意識してくれたらもっと嬉しいだろうなと思わないこともないけど。彼女のいる大俱利伽羅さんにそんなこと期待したって無理な話で

スプーンで彼の口に運ばれるくずきりがちょっとうらやましいとか阿呆なことを考える。
きれいに平らげてくれるのは嬉しいけど、少し心配になって来たな。

「あの…、無理しなくていいんですよ?」

「無理などしていない。普通に美味い」

速攻で返された。

味覚大丈夫なのかな、この人。ああ、でも、私料理下手だからこのくらいの味覚の人の方が誤魔化せていいかも…なあんて。

…何考えてるんだろ。彼女がいるんだから私が彼に料理作ることなんて地球がひっくり返ってもあるわけないのに。

彼女のこと、時々考える。どんな人なんだろうって。

格好付けたがる女性だって言ってた。

クールビューティーな感じの女性を勝手に想像してるんだけど違うのかな。

いつも格好良くスーツで決めているようなキャリアウーマンタイプ?

こう、長い髪ばさっとかき上げて「格好良く決まってるかしら?」みたいな?

…大俱利伽羅さんと上手くやっていけるのかなそんな気の強そうな人で。

余計なお世話だな。

あまり美味しいものではないのに、さっきから良く食べてくれるなぁ。

もしかしたら、私が残りの分をどうしようかと途方に暮れていたから、こうやって処分してくれているのだろうか。

…いやいやいや、まさかねぇ?

私がそんなことをつらつらと考えていたら、下から声が降ってきた。

「もう終わりか」

「へ?」

「まだあるのかと聞いている」

「あっ、ああ、ありますよ?もう全部あげちゃいますよ大俱利伽羅さんに」

「ちょっと待って?それ、僕にもひとつくれないかな?」

――?

今の声は、どこから?

それも今まで聞いたことのないようないい声が降って来たんですけど?

背後から聞こえて来たその声に振り返ってみれば。






二十数年生きて来て初めてお目に掛かったんじゃないかって思うくらいの、大俱利伽羅さんとはまた違ったタイプのえらくスタイルのいいイケメンさんがそこに立っていた。





ようやくみっちゃん出て来ましたね。

待ってたよ、私がw

これまた続いちゃいそうですね(;'∀')